「まつ毛が急に減った」──その変化、甲状腺が関係しているかもしれません

まつ毛エクステのご相談でFRAISEにいらっしゃるお客様の中に、「半年ほど前から自まつ毛が急に細くなり、抜けやすくなった」「アイリストに毎回、まつ毛が少ないと言われる」とお悩みの方がいらっしゃいます。スキンケアを変えたわけでも、ストレスが特別に増えたわけでもないのに、目元の印象がどこか寂しくなってしまった──そのような変化に心当たりがある方は、ぜひこの記事をお読みください。

まつ毛の状態は、身体の内側で起きていることを映す小さな鏡です。その中でも見落とされやすい原因のひとつが、甲状腺の機能異常です。甲状腺ホルモンは全身の代謝を司る物質であり、毛髪・まつ毛の成長サイクルとも深く関わっています。にもかかわらず、まつ毛の変化と甲状腺疾患の関係が広く知られていないために、「加齢のせい」「疲れているだけ」と見過ごされてしまうケースが少なくありません。

この記事では、甲状腺疾患がまつ毛に与える影響のメカニズム、施術を受ける際に知っておきたい注意点、そしてFRAISEのカウンセリングでどのようなことをお伝えすべきかについて、医療法人鳳應会グループの監修医師・近澤徹医師の知見を踏まえながら、丁寧に解説してまいります。

甲状腺ホルモンと毛髪サイクルの深い関係

まず、甲状腺とはどのような臓器なのかを簡単に確認しましょう。甲状腺は喉の前面に位置する蝶のような形をした内分泌腺で、甲状腺ホルモン(主にT3・T4)を分泌します。このホルモンは心拍数・体温・消化・新陳代謝など、身体のほぼあらゆる機能の調整に関与しています。

毛髪の成長サイクル(ヘアサイクル)とホルモンの役割

まつ毛を含むすべての体毛には、「成長期→退行期→休止期」という周期的な成長サイクル(ヘアサイクル)があります。まつ毛の場合、成長期はおよそ30〜60日と頭髪に比べて非常に短く、1本1本が独立したリズムで生え替わっています。このサイクルを正常に維持するためには、毛乳頭(もうにゅうとう)と呼ばれる毛根の細胞に、十分な栄養と適切なホルモン環境が必要です。

甲状腺ホルモンは、毛母細胞(もうぼさいぼう)の増殖を促す働きを持ちます。毛母細胞とは毛根の底部に集まる細胞で、活発に分裂することで毛髪を上方へ押し出す役割を担っています。この細胞の活動が適切なホルモン量によって支えられているため、甲状腺機能が乱れると毛髪サイクル全体が影響を受けることになります。

機能低下症と機能亢進症、どちらも毛に影響する

甲状腺疾患は大きく「ホルモンが不足する機能低下症(橋本病など)」と「ホルモンが過剰になる機能亢進症(バセドウ病など)」に分けられます。一見すると正反対の状態ですが、どちらの場合も毛髪・まつ毛の脱落・菲薄化(ひはくか)を引き起こすことが知られています。機能低下症では代謝全体が落ちることで毛母細胞の活動が鈍り、成長期が短縮されます。機能亢進症では代謝が過剰になることで毛のサイクルが乱れ、休止期に移行する毛が急増します。いずれも結果として「まつ毛が少ない・細い・抜けやすい」という状態につながるのです。

橋本病・バセドウ病とまつ毛の具体的な変化

甲状腺疾患の中でも特に頻度が高い橋本病(慢性甲状腺炎)とバセドウ病(グレーブス病)について、まつ毛への影響をより具体的に見ていきます。なお、これらの疾患は女性に多いことが統計的に示されており、橋本病の患者の約8〜9割、バセドウ病の患者の約7割が女性と言われています。まつ毛エクステサロンを利用される方の多くが女性であることを考えると、アイリストとして基礎知識を持つことはとても大切なことだとFRAISEでは考えています。

橋本病(慢性甲状腺炎)の場合

橋本病は自己免疫疾患のひとつで、本来は外敵から身体を守るべき免疫機能が甲状腺を誤って攻撃してしまうことで炎症が持続し、甲状腺ホルモンの産生が低下します。ホルモン低下による代謝の低下は全身に及び、毛髪全体の乾燥・パサつき・脱落が起こりやすくなります。まつ毛においては、1本あたりの毛の直径が細くなる「毛の菲薄化」と、成長期が短縮することによる「本数の減少」が同時に生じることがあります。また、眉毛の外側1/3が薄くなる「眉毛外側脱毛」は橋本病の古典的な所見として医学書にも記載されており、まつ毛にも同様のメカニズムが働くと考えられます。

バセドウ病(グレーブス病)の場合

バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰に産生され、全身の代謝が加速します。このとき、毛のサイクルは「成長期から休止期への移行」が過剰に促進される状態、いわゆる「びまん性休止期脱毛(diffuse telogen effluvium)」と呼ばれる状態に陥りやすくなります。これは毛が一斉に休止期に入ってしまう現象で、数週間〜数か月単位で急速に毛が減ったと感じることが特徴です。バセドウ病特有の症状として「眼球突出(甲状腺眼症)」も知られており、眼周囲の皮膚や組織が変化することで、まつ毛の生える土台そのものが影響を受けることもあります。

治療薬の影響も無視できない

甲状腺疾患の治療に用いられる抗甲状腺薬(チアマゾール・プロピルチオウラシルなど)は、ホルモン過剰を抑制する効果がある一方で、副作用として脱毛が報告されているケースもあります。また、甲状腺ホルモン薬(レボチロキシンなど)による補充療法の開始直後は、一時的に脱毛が増える「シェッディング」現象が起きることがあります。これは治療が無効なのではなく、ヘアサイクルが正常化に向かう過程で起きる一時的な変化であることが多いのですが、お客様がご不安を感じられる場合には、担当医への確認をおすすめするのが適切な対応です。

甲状腺疾患がある方へのまつ毛エクステ施術──何を確認すべきか

甲状腺疾患と診断されているお客様、あるいは治療中のお客様がまつ毛エクステを希望される場合、FRAISEでは施術の可否を一律に判断するのではなく、現在の体調・治療の状況・まつ毛の状態の3つを丁寧に確認するカウンセリングを行います。ここでは、私たちが実際に大切にしている確認事項をご紹介します。

自まつ毛の健康状態の確認

まつ毛エクステは自まつ毛1本1本にグルー(接着剤)を用いてエクステンションを装着します。そのため、自まつ毛が極端に細い・短い・弱い状態では、エクステの重みに耐えられず、さらなる脱落を招くリスクがあります。甲状腺疾患による毛の菲薄化が顕著な場合、まず医師による治療を優先し、まつ毛の状態が安定してから施術をご検討いただくことをご提案することがあります。これは施術をお断りしているわけではなく、お客様の自まつ毛を長く守るための判断です。

治療の安定期かどうかの確認

疾患が診断直後で治療方針が固まっていない時期、あるいは薬の量の調整中である時期は、ホルモン値が大きく変動しやすく、まつ毛の状態も週単位で変わることがあります。このような時期は施術結果が安定しにくいだけでなく、体調の変動がグルーへの感受性に影響する可能性も否定できません。担当医から「状態が安定している」との判断を得られている時期であれば、より安心して施術に臨んでいただけます。

グルーアレルギーリスクとの複合評価

自己免疫疾患(橋本病・バセドウ病はいずれも自己免疫疾患です)をお持ちの方は、免疫系が過敏になりやすい状態にある可能性があります。まつ毛エクステのグルーに含まれるシアノアクリレートは、皮膚科学的にアレルゲンとなり得る成分です。自己免疫疾患そのものがグルーアレルギーを直接引き起こすわけではありませんが、免疫が敏感な状態にある時期は、アレルギー反応が出やすいリスクがやや高まる可能性を考慮しておくことが重要です。FRAISEでは施術前のパッチテストを推奨しており、不安のある方には事前にご相談ください。

医師との連携の重要性

「美容施術を受けてよいか医師に確認したことがない」というお客様は意外と多くいらっしゃいます。FRAISEは医療法人鳳應会グループと連携するサロンとして、施術の安全性について医学的観点からお客様に情報をお伝えできる立場にあります。不安な点があれば、担当医に「まつ毛エクステを受けたい」とお伝えの上で意見を聞いていただくことを、私たちは積極的にお勧めしています。

施術後のホームケア──甲状腺疾患がある方が特に気をつけたいこと

施術を受けた後のホームケアは、すべてのお客様にとって大切なものですが、甲状腺疾患の影響でまつ毛が繊細な状態にある方にとっては、ケアの質がエクステの持ちと自まつ毛の健康に直結します。以下に、特に意識していただきたいポイントをまとめます。

  • クレンジングは「こすらない・引っ張らない」を徹底する:まつ毛が細く弱い状態のときは、クレンジング時の物理的な摩擦がダメージの主な原因になります。まつ毛専用のオイルフリーミセラー水や、ジェルタイプのまつ毛対応クレンジングを使い、綿棒や専用ブラシで優しく汚れを浮かせるようにしましょう。
  • まつ毛美容液は医師・薬剤師に相談の上で使用する:まつ毛育毛を目的とした美容液の中には、プロスタグランジン誘導体(ビマトプロスト等)類似成分を含むものがあります。これらは眼圧や眼周囲の色素沈着に影響する可能性があり、甲状腺眼症を持つ方は特に注意が必要です。使用前に必ず担当医にご確認ください。
  • スパンを短めに設定したリペアを検討する:自まつ毛の状態が変動しやすい時期は、3〜4週間のリペアサイクルをやや短めに設定し、まつ毛の状態を定期的にアイリストに確認してもらうことが効果的です。FRAISEでは毎回のご来店時に自まつ毛の状態をチェックし、必要に応じてデザインの見直しをご提案します。
  • 栄養面でのサポートを意識する:甲状腺機能低下症では、亜鉛・ビオチン・鉄分などの微量栄養素が不足しやすくなります。これらはいずれもまつ毛の成長に関わる栄養素です。食事バランスを見直し、必要であれば担当医のアドバイスのもとでサプリメントを活用することも選択肢のひとつです。ただし、自己判断での大量摂取は控え、医師の指示に従ってください。
  • 睡眠と体温管理を大切にする:甲状腺機能低下症では体温が下がりやすく、血行が悪化することで毛根への栄養供給が滞ります。質の良い睡眠と身体を冷やさない生活習慣が、まつ毛の状態を整える土台になります。

これらのケアは「まつ毛エクステを綺麗に保つため」だけでなく、自まつ毛そのものを健やかに育てるためにも有効です。施術後のケアに不明な点があれば、FRAISEのアイリストにいつでもお気軽にお尋ねください。

FRAISEのカウンセリング哲学──「状態を正直に話せる場所」であるために

「甲状腺の病気があることを、サロンで話しにくい」とおっしゃるお客様が時折いらっしゃいます。その気持ちはよく理解できます。体調のことを初対面のアイリストに伝えることへの遠慮、あるいは「伝えたら断られるかもしれない」という不安が、本来なら共有すべき情報を伝えにくくさせてしまうのだと思います。

しかし、FRAISEが創業以来17年間変わらずに大切にしてきたのは、「親切・丁寧・納得」という3つの言葉です。お客様が安心して体調のことを話してくださることで、私たちはより適切なデザインのご提案、より安全な施術計画を立てることができます。お客様にとっての「話してよかった」という体験を積み重ねることが、FRAISEが目指すサロンの姿です。

完全個室だからこそできる、丁寧なヒアリング

FRAISEの全施術は完全個室・完全予約制で行われます。周囲を気にせず、担当アイリストとふたりで話せる空間があるからこそ、「最近まつ毛が抜けやすくて」「甲状腺の薬を飲み始めたんです」「医師には相談済みなのですが、サロンでも気をつけることはありますか」といった会話が自然に生まれます。体調に関する情報は、私たちにとって「施術の邪魔になる情報」では決してなく、より良い施術のための大切な判断材料です。

デザインの選択にも「まつ毛の状態」を反映する

自まつ毛が繊細な状態にある時期は、デザインの選択も重要です。エクステンションの長さが長すぎたり、太すぎたりすると、自まつ毛への負担が増します。FRAISEでは、自まつ毛の直径・長さ・強度を確認した上で、自まつ毛1本あたりの負担が最小限になるデザインをご提案します。たとえば、自まつ毛の長さの1.2〜1.5倍以内のエクステンション、細め・軽めの素材の選択、装着本数を控えめにした自然なスタイルなど、状態に応じた調整が可能です。「今の自分のまつ毛でもエクステが楽しめるか」と不安に思われている方も、まずはカウンセリングにお越しください。

「今できる最善」を一緒に考える場所

甲状腺疾患の治療は長期にわたることも多く、まつ毛の状態がすぐに改善するとは限りません。しかし、「今の状態でできること」「回復を待ちながら続けられるケア」「将来的に目指せるデザイン」──そういった時間軸を持った提案こそが、FRAISEのカウンセリングが目指すものです。一時的に施術内容を調整することがあったとしても、お客様の目元の魅力を引き出すという目標は変わりません。私たちはお客様と同じ方向を向いて、一緒に「今できる最善」を考えたいと思っています。

FRAISE Note

甲状腺疾患とまつ毛の関係は、まだ多くの方に知られていないテーマです。「まつ毛が急に減った気がする」「以前よりエクステの持ちが悪くなった」と感じたとき、その背景に身体の内側からのサインが隠れている可能性があることを、FRAISEはお伝えしたいと思っています。医療法人鳳應会グループのサポートのもと、私たちは医学的な根拠に基づいた情報をお客様にお届けし、安全で納得のいく施術をご提供できるよう努めています。体調のことも含めて、どんな小さなご不安でも遠慮なくカウンセリングでお話しください。北24条(1号店)・円山(2号店)、いずれの店舗でも、あなたの目元と向き合う時間を大切に準備してお待ちしています。