産後にまつ毛が「ごっそり抜けた」——あなただけではありません

出産を終えて数週間が経ったころ、ふとまつ毛を触ると以前よりも明らかに少なくなっている、あるいは枕やタオルに抜けたまつ毛がついている……。そんな経験をして不安になったことはありませんか。授乳や育児で睡眠も十分に取れないなかで目元の変化に気づくと、「何か身体のおかしなことが起きているのでは」と心配になるのは当然のことです。

実際、産後のまつ毛の抜け毛や薄毛は非常にありふれた生理的変化であり、多くのお母さんが経験しています。日本産婦人科学会の資料においても、産後の一時的な脱毛は病的なものではなく、ホルモン変動に起因する自然現象であると位置づけられています。大切なのは、そのメカニズムを正しく理解し、焦らず・適切に対応することです。

このコラムでは、FRAISEの監修医師である近澤徹医師(医療法人鳳應会理事長)の医学的見地をもとに、産後のまつ毛変化がなぜ起きるのかを丁寧にひも解きます。そのうえで、まつ毛エクステをいつ・どのように取り入れれば安全かという、サロン目線の実践的な情報もあわせてお伝えします。

産後の抜け毛はなぜ起きるのか——ホルモンと毛周期の医学

妊娠中は「まつ毛が育ちやすい状態」だった

まつ毛を含む体毛には、成長期(アナゲン)・退行期(カタゲン)・休止期(テロゲン)という毛周期(ヘアサイクル)があります。通常、まつ毛の成長期は約30〜45日間と、頭髪(約2〜6年)と比較してかなり短いのが特徴です。妊娠中はエストロゲン(卵胞ホルモン)の血中濃度が平常時の10〜100倍近くにまで上昇し、毛根を成長期に留まらせる作用が強まります。その結果、本来なら抜けるはずだったまつ毛や頭髪が休止期に入らずに生え続け、妊娠中は毛が多い・ボリュームがあると感じる方が少なくありません。

出産後のホルモン急落が「一斉脱毛」を引き起こす

ところが分娩を境に、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)の値は急激に低下します。この急落が毛根への「成長期を続けなさい」というシグナルを断ち切り、妊娠中に成長期に固定されていた毛が一斉に退行期・休止期へと移行します。その後2〜3か月のタイムラグを経て大量のまつ毛や頭髪が抜け始めるのが、産後脱毛の正体です。この現象は医学的に「分娩後脱毛症(telogen effluvium)」と呼ばれ、一過性のものです。

まつ毛特有の影響

頭髪の産後脱毛は広く知られていますが、まつ毛も同じメカニズムで影響を受けます。まつ毛はもともと本数が少ない(上まつ毛100〜150本・下まつ毛50〜80本が平均)うえに毛周期が短いため、頭髪よりも変化が目に見えやすいという特徴があります。さらに産後は睡眠不足・栄養バランスの乱れ・ストレスが重なりやすく、これらも毛周期の乱れを助長する要因となります。

回復のタイムラインと「焦らないために知っておきたいこと」

産後の抜け毛がいつ頃おさまるのか、見通しを持つことはとても重要です。多くの場合、分娩後脱毛症の抜け毛ピークは産後3〜6か月ごろに訪れ、その後は徐々に毛周期が平常に戻っていきます。自まつ毛の本数や質感が妊娠前に近い状態に回復するまでには、個人差はあるものの産後6〜12か月を目安に考えるとよいでしょう。

回復を助ける日常習慣

  • タンパク質と鉄分の摂取:毛髪はケラチンというタンパク質から構成されています。産後は母乳を通じて栄養が消費されやすいため、肉・魚・大豆製品・卵などのタンパク源を意識的に摂ることが自まつ毛の再生を支えます。鉄欠乏性貧血も産後脱毛を悪化させる要因になるため、鉄分の補給も合わせて意識しましょう。
  • ビタミンDとビオチンの補給:ビオチン(ビタミンB7)は毛根細胞の代謝を助け、毛の成長を支援する栄養素として知られています。授乳中でも安全に摂取できますが、過剰摂取には注意が必要なため、かかりつけ医に相談したうえでサプリメントを活用する方法もあります。
  • 目元を摩擦から守る:産後の疲れからつい目を強くこすってしまうことがありますが、その摩擦がまつ毛の毛根へのダメージを加速させます。洗顔時は目元を押さえるように優しくすすぐ、乾燥を感じたらアイクリームで保湿するなどのケアが助けになります。
  • まつ毛美容液の活用:まつ毛の成長周期をサポートするとされる成分(ビマトプロストを含む医療品は医師の処方が必要ですが、市販のまつ毛美容液はペプチドや植物エキスを主成分としたものが多い)を取り入れることも一つの選択肢です。使用前に成分を確認し、授乳中の方はかかりつけ医へ相談されることをお勧めします。
  • 睡眠と水分補給:育児中は難しいことではありますが、成長ホルモンは深い睡眠中に分泌され、毛根の細胞分裂を促します。短時間でも睡眠の質を高める工夫(授乳後のパートナーへの引き継ぎ、昼寝の活用)を取り入れることが、長い目で見て毛の回復を助けます。

受診を検討すべきケース

産後脱毛は多くの場合自然に回復しますが、産後12か月を過ぎても改善が見られない場合や、抜け毛以外に倦怠感・むくみ・体重増加などの症状を伴う場合は、甲状腺機能低下症(橋本病など)や鉄欠乏性貧血の可能性があります。これらは血液検査で確認できる疾患ですので、主治医または内科・皮膚科への相談をご検討ください。

まつ毛エクステはいつから始めていいの?——サロン目線の安全基準

産後にまつ毛が薄くなり、ふだんのメイクでのカバーが難しくなったとき、まつ毛エクステを検討される方は少なくありません。しかし「今の自まつ毛の状態でエクステをつけても大丈夫なの?」という不安を持つ方も多く、FRAISEにも産後のお客様からそのような問い合わせを多くいただきます。ここでは、安全にエクステを取り入れるためのタイミングの考え方を整理します。

施術可能の目安——自まつ毛の「土台」をまず見極める

まつ毛エクステは、自まつ毛1本1本に人工まつ毛を接着する技術です。そのため、自まつ毛に一定の本数とコシがあることが、美しい仕上がりと毛根保護の前提になります。産後の抜け毛が激しいピーク時(産後3〜5か月ごろ)には、自まつ毛が極端に少なかったり、細く弱くなっていたりすることがあります。このような状態での施術はエクステの持ちが悪くなるだけでなく、残った自まつ毛に必要以上の負荷をかけるリスクがあります。

一般的な目安として、産後6か月以降でまつ毛の抜け毛量が落ち着き、新しい産毛が生え揃ってきたタイミングがエクステを検討し始める良い時期といえます。ただし、これはあくまで一般論であり、個人差が大きいため、実際の状態は来店時のカウンセリングで確認することが何より重要です。

授乳中のグルー(接着剤)リスクについて

FRAISEでよくいただく質問の一つが、「授乳中にグルーの成分が赤ちゃんに影響しないか」というものです。まつ毛エクステで使用されるグルーは主成分がシアノアクリレート系の接着剤で、硬化後は皮膚と物理的に接着しているだけであり、血液や母乳を通じて体内に吸収されるメカニズムはありません。施術後にグルーの揮発が完全に終わった状態であれば、授乳中であっても赤ちゃんへの成分的なリスクは現時点では考えにくいと、監修医師の見解でも示されています。

ただし、施術中に使用するグルーの揮発成分が眼・粘膜を刺激することはあり得ます。産後はホルモン変化により皮膚・粘膜が敏感になっている場合があるため、初回施術では低刺激・低揮発性のグルーを選択肢として相談いただくこと、また施術後に眼の充血・かゆみが生じた際はすぐにサロンへご連絡いただくことをFRAISEでは強くご案内しています。

産後ママに合ったエクステデザインの選び方

産後のまつ毛は、妊娠前より本数・太さ・コシが変化していることが多いため、以前と同じデザインが同じように仕上がるとは限りません。ここでは産後の自まつ毛の状態に合わせたデザイン選びの考え方を、FRAISEのカウンセリング現場でも実際にお伝えしている視点でご紹介します。

エクステの太さと長さは「控えめから始める」が鉄則

細くなった自まつ毛に太く・長いエクステをつけると、毛根への物理的な負荷が大きくなり、自まつ毛が抜けやすくなるリスクがあります。FRAISEでは産後のお客様に対して、エクステの太さは0.07〜0.10mmの細めのもの、長さは自まつ毛の長さから1〜2mm程度の延長にとどめることを基本としてご提案します。仕上がりの華やかさよりもまず「自まつ毛への優しさ」を優先させることが、結果的に長くエクステを楽しめる近道です。

本数よりも「カール・配置」で印象を変える

自まつ毛の本数が少ない時期でも、カールの種類や配置の工夫によって十分な目元の印象アップが可能です。たとえば目尻側を少し長めに設定するデザインは、目の横への広がりを演出し、全体の本数が少なくても開いた印象を作れます。また、Cカールより緩やかなJカール・Bカールを選ぶと、まつ毛への負荷を抑えながら自然な目元を演出できます。産後の忙しい時間のなかで「すっぴんでも目元が整っている状態」を目指す方には、自然ナチュラルデザインが特に好評です。

ボリュームラッシュ(フラットラッシュ)の選択肢

自まつ毛の本数が少ない時期でも豊かなまつ毛を楽しみたい方に近年注目されているのが、超軽量のフラット(エアリー)ラッシュです。断面が平らなフラットラッシュは従来の丸断面のエクステと比べて重量が軽く、自まつ毛への負荷を抑えながら密度感を出せるという特徴があります。ただし、産後の極めて弱い自まつ毛に対してすべての方に適切かどうかは状態次第のため、必ずカウンセリングで現状を確認してから施術方針を決めることが重要です。

施術後の産後ケアとして心がけること

  • 洗顔は当日夜から翌朝以降に:グルーの硬化には時間を要します。産後の育児で汗をかきやすい状況でも、当日の施術後4〜6時間は水や湿気をなるべく避けていただくことで接着の安定度が高まります。
  • 目元のこすりすぎに注意:育児中は抱っこや授乳の体勢から肩こり・目の疲れが出やすく、無意識に目元を押さえてしまいがちです。エクステの長持ちと自まつ毛の保護のいずれにとっても、目元の摩擦を減らすことが有効です。
  • オイル系スキンケアは目元を避けて:産後のスキンケアで保湿を重視される方は多いですが、グルーはオイル成分で溶解しやすい性質があります。目元専用の非オイルタイプのクレンジングを選ぶと、エクステの持ちを保ちやすくなります。

FRAISEが産後のお客様に寄り添うカウンセリング哲学

FRAISEが2009年の創業以来17年間大切にしてきた「親切・丁寧・納得」という哲学は、産後のお客様のご来店においてとりわけ意味を持つと私たちは考えています。育児の合間を縫って予約を取り、サロンに足を運んでくださる産後ママのお客様は、疲れているなかでも「少しだけ自分を整えたい」という気持ちを持ってお越しになります。その気持ちを丁寧に受け止め、状態に合わせた最善の提案をすることが、私たちの役割だと感じています。

カウンセリングで必ずお聞きする産後特有の確認事項

FRAISEでは、産後のお客様に対して通常のカウンセリング項目に加えて以下の点を確認するよう心がけています。これは医療法人鳳應会グループが定める安全基準の一部として、医学的見地から設けているものです。

  1. 産後何か月が経過しているか(毛周期の安定度の目安)
  2. 現在授乳中かどうか(ホルモン状態の参考情報として)
  3. まつ毛の抜け毛・薄毛の自覚がどの程度か(施術量の調整に直結)
  4. 目元の皮膚の敏感さや過去のアレルギー歴(グルー選択の根拠)
  5. 来店当日の体調(産後は体調変化が大きいため、施術中の体位の調整なども含む)

これらの情報をもとに、施術に進むか・別のケアを先行するか・エクステの量や種類をどうするかを一緒に考えます。「今の自まつ毛の状態では少し待った方がいいかもしれない」という結論になることもあり得ますが、それも含めてお客様にとって最善の選択を目指すのがFRAISEのスタイルです。

完全個室だから話せること

FRAISEは完全個室・完全予約制のサロンです。施術中に「産後から体が戻らなくて不安」「まつ毛が抜けるのが怖くて眠れない夜がある」といった、サロンの枠を超えた悩みを打ち明けてくださるお客様もいらっしゃいます。そのようなとき、私たちは施術の手を止めて丁寧にお話を伺います。お気持ちの整理に少しでもお役に立てるなら、それもFRAISEとしての大切な仕事の一つだと考えています。

産後の目元の変化は、ご自身の身体とじっくり向き合う機会でもあります。焦らず、無理をせず、回復のペースを大切にしながら、その時々の状態に合ったまつ毛の楽しみ方を見つけていただけるよう、FRAISEはいつもそばにいます。

FRAISE Note

産後のまつ毛の変化に悩んでいる方、「エクステを試したいけれど今の状態で大丈夫なのか不安」という方は、ぜひ一度FRAISEへご相談ください。医療法人鳳應会グループのサポートのもと、監修医師の医学的見地に基づいた安全基準をサロン運営に反映している私たちだからこそ、産後という特別な時期のデリケートな状態に寄り添った提案が可能です。カウンセリングは施術とは別にゆっくりとお時間をとってお話を伺いますので、「まだエクステをするかどうか決めていない」という段階でのご相談も大歓迎です。

北24条の1号店、円山の2号店、どちらも完全個室・完全予約制でお迎えしております。産後の慌ただしい日々のなかで、少しだけ自分のための時間を作ってみませんか。その一歩を、私たちFRAISEは心からお待ちしています。