17年という時間が教えてくれたこと
「どうしてそんなに長く続けられるのですか?」という問いを、お客様からいただくことがあります。まつ毛エクステ専門サロンFRAISEが創業したのは2009年のこと。以来2026年現在に至るまで17年間、北海道・札幌という土地でアイリストとして歩んできた私たちには、この問いに正面から向き合う責任があると感じています。
美容業界全体では、スタイリストやセラピストの平均勤続年数が3〜5年程度ともいわれています。技術職は体力的な負担が大きく、繊細な感覚を長期間にわたって維持し続けることは容易ではありません。とりわけアイリストは、1ミリ以下の精度で目元に接し続ける集中力と、デリケートな部位を扱う緊張感を毎日積み重ねる職種です。
この記事では、私たちFRAISEのスタッフが実際に大切にしてきたことを、技術の継続的な鍛錬・接客の姿勢と対話の質・心身の健康管理という三つの柱から掘り下げます。アイリストを目指す方に、そして現在施術を受けてくださっているお客様に、「このサロンのスタッフはどんな思いで働いているのか」を感じ取っていただければ幸いです。
技術はゴールではなく、更新し続けるもの
アイリストの仕事の中核には、言うまでもなく技術があります。しかし技術とは一度習得すれば完成するものではなく、時代・素材・道具とともに絶えず更新され続けるものだというのがFRAISEの基本的な考え方です。
接着剤と素材の進化に追いつく
まつ毛エクステに使用するグルー(接着剤)は、その主成分であるシアノアクリレートの配合比率や助溶剤の組み合わせが年々改良されています。硬化速度・柔軟性・耐湿性・揮発臭の強さはグルーごとに異なり、季節・施術室の温湿度・お客様のまつ毛の油分量によって最適な選択が変わります。エクステのファイバー素材もポリブチレンテレフタレート(PBT)の品質向上が進んでおり、数年前の感覚だけで施術し続けることは品質の低下に直結します。私たちは定期的にメーカーと対話し、新素材のサンプルテストを重ねることで、常に現場の情報を最新化しています。
フォームの自己点検という習慣
長く施術を続けると、無意識のうちにフォームが崩れることがあります。たとえば利き手側の肩が内側に入り込む姿勢、頭部をわずかに傾け続ける癖、ピンセットを握る力が必要以上に強くなるといった変化は、自覚しにくいうえに積み重なると職業性の疼痛につながります。FRAISEでは、スタッフ同士が定期的に施術姿勢を客観的に確認し合う機会を設けています。外から見てもらうことで、自分では気づけない偏りに早期に気づくことができます。
アシスタント期間に身につけるべき「丁寧さの土台」
技術の長寿命化という観点で最も重要なのは、じつはキャリアの初期段階にあると私たちは考えています。「速さより先に、丁寧さを骨格として持つこと」が、後に技術を更新し続けられるアイリストになるための基盤です。速さだけで評価されてきたスタッフほど、素材や道具が変わったときに柔軟に対応しにくい傾向があります。FRAISEの研修では、施術スピードよりも根元の距離・角度・装着力の均一性を優先的に評価するカリキュラムを採用しています。
接客の質が、技術の価値を決める
優れた技術を持つアイリストが必ずしも長く続けられるわけではない、という事実があります。その一因として挙げられるのが、接客の質とコミュニケーション設計の問題です。お客様と長期的な信頼関係を築けるかどうかは、施術の仕上がりと同じくらい、いえそれ以上に、日常の対話の積み重ねにかかっています。
カウンセリングを「情報収集」で終わらせない
来店時のカウンセリングでは、まつ毛の状態・ライフスタイル・ご希望のデザインを確認します。しかしこれを単なる情報収集の場として捉えていると、お客様との関係は施術と会計のやり取りで完結してしまいます。FRAISEが大切にしているのは、カウンセリングを「このアイリストは自分のことをちゃんと見てくれている」と感じていただける時間にすることです。目元の変化を施術履歴として記録し、前回と比べた変化に言及すること、季節の変わり目にまつ毛が抜けやすくなるメカニズムを一言添えること、そういった小さな積み重ねが、安心感と信頼感を育みます。
「親切・丁寧・納得」の三語を日々実践する
FRAISEの創業以来変わらぬ哲学は「親切・丁寧・納得」という三語です。これは標語として掲げるだけでなく、具体的な行動レベルに落とし込んで日々実践することが重要だと考えています。「親切」とは、お客様の言葉にならない不安を先取りして情報を提供すること。「丁寧」とは、施術中の声かけや姿勢の確認など細部への注意を怠らないこと。「納得」とは、仕上がりについてお客様が自分の言葉で「これがよい」と言えるまで対話を続けることです。この三語は、アイリストとして17年間ぶれずにいられるコンパスの役割を果たしています。
断ることができる接客の強さ
長く続けるための接客において、見落とされがちな要素があります。それは適切に断ること、修正を提案することができる勇気です。お客様のご要望がまつ毛の状態から見て無理のあるデザインである場合、あるいは目元のコンディションが施術に適していない場合、正直に伝えられるかどうかはアイリストの誠実さの試金石です。短期的には「断られた」と感じさせてしまうことがあっても、長期的にはその誠実さがお客様の信頼を深めます。FRAISEでは、医療法人鳳應会グループとの提携による医師監修体制があることで、医学的な根拠をもって施術の可否や注意点をお伝えする土台が整っています。
アイリストの職業性リスクと医学的視点からの健康管理
アイリストの健康管理は、個人の努力だけで完結する問題ではありません。業種特有の身体的・精神的負荷を正確に把握し、予防的かつ継続的なケアの仕組みを持つことが長く働き続けるための現実的な答えです。医療法人鳳應会グループの監修医師・近澤徹医師の見地も踏まえながら、アイリストが注意すべき主なリスクを整理します。
眼精疲労・ドライアイ
アイリストは施術中、お客様の目元から数十センチという近距離で、毛一本の太さや根元からの距離を目視で確認し続けます。この作業は毛様体筋(ピント調節をつかさどる筋肉)に継続的な負荷をかけます。また施術への集中によってまばたきの回数が減少し、涙液の蒸発が進むため、ドライアイの症状が起こりやすくなります。1時間施術するごとに意識的に遠くを見る、まばたきを数回意識して行うといった小さな習慣が、長期的な目の健康を守ります。施術室の照明も重要で、直接目に入りにくい角度と色温度(4000〜5000K程度)の設定が推奨されます。
頸部・肩甲帯・腰部への負荷
施術中は前傾姿勢が続きます。頭部の重さは約5〜6kgありますが、首を15度前傾させると首にかかる実効的な負荷は約12kgに増大し、30度では17kg前後になるという研究報告があります。アイリストが無意識に取る施術姿勢がこの範囲に入りやすいことは容易に想像できます。日常的なストレッチと体幹トレーニング、そして施術台の高さ調整が不可欠です。施術台とスツール(椅子)の高さの関係を数センチ変えるだけで、頸部・腰部への負荷が大きく改善されることも実感しています。
グルー揮発成分への長期曝露対策
グルーの主成分シアノアクリレートは硬化時にわずかに揮発します。換気が不十分な環境で長時間繰り返し曝露されると、目や呼吸器への刺激が蓄積するリスクがあります。FRAISEの完全個室施術室には換気設備を整え、マイクロポアマスクを着用して施術を行います。また、施術後の手洗い・うがいを習慣化し、定期的に眼科や内科で気になる症状を確認することも私たちが推奨しているルーティンです。
精神的負荷とバーンアウト予防
繊細な目元を扱うという責任感、クレーム対応のストレス、予約管理や商材発注などの業務多様性は、蓄積すると職業的燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクになります。定期的に休日を確保し、仕事の外で別の楽しみを持つことが精神的健康の維持には欠かせません。FRAISEでは、スタッフが互いの業務状況を共有し、負荷が偏らないよう調整し合う文化を大切にしています。
長く働ける環境をつくる──サロンの仕組みとしての健康設計
個々のアイリストの自己管理だけに任せるのではなく、サロン全体の仕組みとして働きやすい環境を設計することこそ、スタッフが長く活躍できる土台になります。これはFRAISEが17年間の歩みのなかで、試行錯誤しながら積み上げてきた組織としての考え方です。
完全予約制・完全個室が生む余裕
FRAISEの完全予約制・完全個室という施術スタイルは、お客様のプライバシー保護と集中した施術環境のためだけでなく、アイリスト自身の働きやすさにも深く関係しています。予約と予約の間に準備・片付け・換気・記録記入の時間が確保でき、次のお客様を慌てた状態で迎えることがありません。この「余白の時間」は、心身のリセットとして機能します。
医療法人グループとの連携が生む安心感
医療法人鳳應会グループとの提携は、お客様の安全を守るためのものですが、同時にアイリスト自身の安心感にも繋がっています。目元トラブルが発生した際に相談できる医師が身近にいること、施術基準を医学的根拠に基づいて構築できること、そしてスタッフ自身も体調や目元の不安を相談しやすい環境があることは、長く安心して働き続けられる条件の一つです。
技術共有と「失敗を話せる文化」
アイリストが孤独になりがちな瞬間の一つに、「施術でうまくいかなかったとき」があります。技術的な悩みを一人で抱えこむと、解決に時間がかかるうえに自信喪失につながります。FRAISEでは定期的なミーティングで技術上の課題を共有し、「うまくいかなかった経験」も学びとして話せる雰囲気をつくることを意識しています。失敗を隠す文化ではなく、失敗を材料にする文化が技術の底上げと精神的健康の両方に寄与します。
外部研修・資格更新への積極的な投資
業界団体や美容学校が主催するセミナー、グルーメーカーの技術講習会、眼科領域の勉強会への参加は、スタッフのモチベーション維持と技術更新の両面で効果があります。「学ぶことがある」という感覚は、アイリストとしての現役感を持ち続けるうえで非常に重要です。FRAISEでは、こうした研修への参加を推奨し、費用面でのサポートを設けることで、スタッフが学びを止めない環境を整えています。
「親切・丁寧・納得」を17年先も届けるために
ここまで、技術の更新・接客の哲学・健康管理・サロンとしての環境設計という四つの視点から、アイリストが長く続けるために必要なことを述べてきました。最後に、これらすべての根底に流れているFRAISEとしての姿勢についてお伝えします。
技術を磨くのは、お客様のためです。接客を誠実にするのも、お客様との関係を大切にしたいからです。しかし、アイリスト自身が疲弊し、心身のコンディションが崩れた状態では、最高の技術も最善の接客も届けることができません。つまり、アイリストが健康で長く働き続けること自体が、お客様へのサービスの質に直結しているのです。この視点を持てたとき、健康管理は義務ではなく、お客様への誠実さの一形態として捉え直すことができます。
「17年間どうやって続けてきたのですか」という問いへの、私たちの答えはシンプルです。一回一回の施術に手を抜かないこと。お客様の言葉の奥にある気持ちを聞こうとすること。自分たちの身体と心のコンディションを整えること。そしてその三つを支える仕組みをサロン全体でつくり続けること。華やかに見える美容の仕事も、その実態は地道なルーティンの積み重ねです。
FRAISEは今後も、「親切・丁寧・納得」という創業からの哲学を変えずに持ち続けます。それは17年後の私たちも同じように言えるでしょう。お客様に長く通っていただけるサロンであり続けることと、スタッフが長く誇りを持って働き続けられるサロンであること、この二つは矛盾しません。むしろ、一方があるから他方が成り立つのだと、17年間の経験が教えてくれています。
まつ毛エクステを初めてお試しになる方も、長年通い続けてくださっているリピーターの方も、私たちFRAISEのスタッフはその一人ひとりの目元と向き合うことを日々の喜びとしています。ご来店の際には、仕上がりのご希望だけでなく、生活の変化や目元のちょっとした気になることも、気軽に話しかけてみてください。カウンセリングから施術後の過ごし方まで、丁寧にご一緒します。
FRAISE Note
今回の記事では、アイリストとして17年間歩んできたFRAISEの現場の哲学をお伝えしました。技術・接客・健康管理という三つの柱は、私たちスタッフにとっての指針であると同時に、お客様に安心してご来店いただくための約束でもあります。医療法人鳳應会グループのサポートのもと、医師監修による安全基準と医学的視点を日常の施術に取り入れることで、FRAISEは今後も「長く信頼されるサロン」であり続けることを大切にしています。
北24条の1号店・円山の2号店、どちらも完全個室・完全予約制でお待ちしています。まつ毛や目元のこと、施術について疑問に思っていること、どうぞお気軽にカウンセリングの場でお聞かせください。私たちがじっくりとお話を伺い、お一人おひとりに合ったご提案をさせていただきます。